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毎日jpによる計画停電の検証

検証・大震災:混乱「計画停電」(1)死者出れば政権吹っ飛ぶ

東電は区域を決めて意図的に電力供給を止める計画停電に踏み切るしかないと判断。13日午後、清水正孝社長が菅直人首相に「このままだと大規模停電になりかねません」と報告した。
 しかし、首都圏の鉄道網などが大混乱するのは目に見えている。複数の政府高官によると、枝野長官は「せめて14日午前中だけでもやめてくれ」と詰め寄ったが、藤本副社長は「お言葉ですが、落雷で停電しても死者が出たという報告はありません」などと反論、枝野長官が「今回は意識的に止めるんだろう」と怒りをあらわにした。
 枝野長官が譲らなかったのは、大塚耕平副厚生労働相らから13日夜、「病院や在宅患者宅に緊急の電源を確保するよう徹夜で連絡しても、14日朝には間に合わない」と報告を受けていたからだ。「死者が出れば政権が吹っ飛ぶ」との声が政権内に上がった。枝野長官は「大口事業者に泣きついてでもやめるんだ」と重ねて迫った


検証・大震災:混乱「計画停電」(2)首相の影は薄かった

計画停電は13日に正式に官邸に伝えられ、首相が夕方に了承、枝野長官を本部長とする電力需給緊急対策本部設置が決まった。計画停電は東電が午後6時半に発表することになったが、急きょ延期される。東電は「官邸からストップがかかった」と説明するが、官邸は「東電が医療や鉄道など関係機関と何の調整もしていなかった」と主張。


検証・大震災:混乱「計画停電」(3)遅れたグル-プ分け

間違いの多発は、本店の担当者を中心に作業した結果だった。計画停電は対象地域の変電所からの配電を停止するが、変電所の配電エリアは自治体単位ではない。同じ町内でも変電所が異なるケースがある。支店が熟知するこうした細かい情報は本店にはなく、情報交換もなかった。

細川律夫厚労相は事前連絡をしてこない東電への怒りを募らせた。在宅で人工呼吸器などを使用する患者をどう保護するか。大塚耕平副厚労相や医療現場を所管する大谷泰夫医政局長らを招集し指示した。「一人も犠牲者を出すんじゃない。在宅医療患者は末端まで連絡してくれ」


検証・大震災:混乱「計画停電」(4)鉄道の大動脈断絶

鉄道事業を監督する国土交通省は、菅首相が前夜に計画停電を発表する直前まで詳細な実施予定を知らされていなかった。官邸や東電から連絡はない。同省鉄道局幹部が情報を得たのは鉄道事業者からだった。
 「聞いてないぞ」。それでも大きな混乱が生じる間引き運転になるとは予想できなかった。「対象から鉄道事業者を外すよう東電に指導してほしい」。所管する経済産業省・資源エネルギー庁に鉄道局長名で申し入れたのは混乱当日の14日。対応は後手に回った。


検証・大震災:混乱「計画停電」(5)経済活動揺るがす


検証・大震災:混乱「計画停電」(6)何で被災地が


検証・大震災:混乱「計画停電」(7)暗闇に包まれた


検証・大震災:混乱「計画停電」(8止)「ブラックアウト」寸前

政権内でも景気への影響を懸念する与謝野馨経済財政担当相が「産業界の負担が重過ぎる」と見直しを要求。経産省は結局、東電に福島第1原発から30キロ圏内にある被災した火力発電所の復旧を急がせ、夏場の供給力を5500万キロワットまで積み上げさせることで15%削減に緩和した。が、実現を危ぶむ声もくすぶる。

 電力問題は迷走含みのまま夏に向かう。





続きはリンク先元記事のコピー



検証・大震災:混乱「計画停電」(1)死者出れば政権吹っ飛ぶ

 ◇官邸「午前中やめろ」 周知遅れ「呼吸器止まる」

 東日本大震災から3日後の月曜日、3月14日未明、もう一つの危機が迫っていた。
 「病院や家庭で人工呼吸器が止まり、死人が出る恐れがある。分かってますか」。枝野幸男官房長官が首相官邸で、東京電力で電力供給部門を統括する藤本孝副社長らに迫った。午前0時40分を回り、広域にわたる「計画停電」開始まで6時間を切っていた。
 東電は11日の大震災で福島第1、第2原発が停止し、電力供給の約4割(約1800万キロワット)を失った。週明け14日には電気が大幅に不足し、首都圏で大規模停電(ブラックアウト)が起きる可能性が高い。東電は区域を決めて意図的に電力供給を止める計画停電に踏み切るしかないと判断。13日午後、清水正孝社長が菅直人首相に「このままだと大規模停電になりかねません」と報告した。
 しかし、首都圏の鉄道網などが大混乱するのは目に見えている。複数の政府高官によると、枝野長官は「せめて14日午前中だけでもやめてくれ」と詰め寄ったが、藤本副社長は「お言葉ですが、落雷で停電しても死者が出たという報告はありません」などと反論、枝野長官が「今回は意識的に止めるんだろう」と怒りをあらわにした。
 枝野長官が譲らなかったのは、大塚耕平副厚生労働相らから13日夜、「病院や在宅患者宅に緊急の電源を確保するよう徹夜で連絡しても、14日朝には間に合わない」と報告を受けていたからだ。「死者が出れば政権が吹っ飛ぶ」との声が政権内に上がった。枝野長官は「大口事業者に泣きついてでもやめるんだ」と重ねて迫った。
 午前3時過ぎ。藤本副社長は再び枝野長官を訪ね、報告した。「電力需給の見通しが立ったので、午前10時か11時までは実施しないで済みそうです」。午前中は停電見送りが固まり、枝野長官は「やればできるじゃないですか」とねぎらった。しかし、この時点で停電中止は午前中にとどまり厚労省では病院対策などで時間との闘いが続く。鉄道各社が東電から連絡を受けたのは午前4時半前後で、大幅な間引き・運休などが決まった後だった。
    ◆
 「確か、アメリカのカリフォルニア州で2001年に行った計画停電の資料があるはずだ」。11日の震災直後、東京都千代田区の東電本店。原発事故の対応に追われる原子力部門と別のフロアでは、藤本副社長ら電力部門の幹部が海外の資料と首っ引きになっていた。戦後の混乱期を除いて日本で計画停電が実施された例はない。
 実は東電は03年にも電力不足のおそれに直面した。福島第1原発などのデータ改ざん事件で17基の原発が全停止に追い込まれ、夏場を乗り切れるか危ぶまれた。この時は冷夏と原発の再稼働で事なきを得た。資料は当時集めた。「工場の操業停止や現金自動受払機の休止で生活や経済活動が混乱」--。資料にはそう記されていた。
 「霞が関や大手町まで停電させれば首都機能がまひする」。電力部門は12日未明までかかって東京23区の大半を除く計画停電のグループ割りを作成。その朝、経済産業省に駆け込んだ。同省幹部は鉄道や病院、銀行決済、空港への影響が頭に浮かび、うなった。「制御不能の大停電か、計画停電の二つに一つの選択か……」
    ◆
 不測の大規模停電を回避するための計画停電。しかし、官邸、霞が関、東電とも準備不足は明らかだった。停電は14日夕、実施され、茨城県鹿嶋市の避難所の電気が消えた。国土交通省幹部は「停電による社会への影響は誰もが意識していたが、情報共有や連携ができなかった」と悔やむ。【震災検証取材班】

■ことば
 ◇ブラックアウト
 大都会での突発的な大規模停電。電力需要が供給能力を上回った場合に送電システムが自動的に停止することなどで起きる。03年8月14日にニューヨークを中心に広範な地域で停電したのが代表例。29時間続き、交通が全面的にまひ、約5000万人が影響を受けた。工場の操業停止や金融市場の混乱などで数十億ドルの経済的損失が出た。


検証・大震災:混乱「計画停電」(2)首相の影は薄かった2011年5月5日
 東日本大震災による原発停止で深刻な電力不足に陥った首都圏。政府と東電は「計画停電」で乗り切ろうとしたが、生活や企業活動への配慮を欠き、混乱を広げた。(肩書は当時)
 ◇3月13日夜、官邸
 ◇電力まで手が回らず
 東京電力福島第1原発1号機で3月12日に水素爆発が起こり、菅直人首相は「原発ダウン」に伴う電力問題まで手が回らなかった。
 「手付かずになっています。電力をやってもらえませんか」。12日夜から慌ただしさを増す首相官邸内で細野豪志首相補佐官が加藤公一首相補佐官に声をかけた。すぐに経済産業省から出向の立岡恒良内閣審議官を中心とする「計画停電対処実務チーム」が結成された。
 一方、節電を国民に周知する「広告塔」として枝野幸男官房長官らは蓮舫行政刷新担当相に白羽の矢を立てた。政府当局者によると、当初は「電力需給」全般を担う担当相も検討されたが、電力行政を担う経産省が「屋上屋になる」と警戒、「節電啓発担当相」に落ち着いた。しかし、海江田万里経産相と蓮舫氏が別々に東電幹部らを呼び出すようになり、懸念は現実になった。
 計画停電は13日に正式に官邸に伝えられ、首相が夕方に了承、枝野長官を本部長とする電力需給緊急対策本部設置が決まった。計画停電は東電が午後6時半に発表することになったが、急きょ延期される。東電は「官邸からストップがかかった」と説明するが、官邸は「東電が医療や鉄道など関係機関と何の調整もしていなかった」と主張。結局、首相が午後7時50分からの会見で発表し、午後8時20分から東電で詳細が説明された。
 「明日から計画停電を実施することを了承した。大変な不便をかける苦渋の決断だ」。首相は記者発表したが、どれほどのパニックを起こすかは想像がつかなかった。この後、省庁ごとの対応を協議するため官邸で開かれた緊急対策本部幹事会の初会合は険悪なムードに包まれた。
 「災害で停電しなければなりません。よろしくお願いします」。東電役員があいさつすると、事務局長の加藤補佐官が声を上げた。「これは東電の問題だ。政府が協力するのは当たり前だが、最初におわびするのが筋じゃないのか」。役員は「申し訳ありません」と深々と頭を下げた。
 13日夜から東電と攻防を繰り広げた官邸。「経済活動にあまり負荷をかけないように」。首相の指示は短く、報告には「分かった。任せる」。側近は「役割分担」と語るが、首相の影は薄かった。


検証・大震災:混乱「計画停電」(3)遅れたグル-プ分け 2011年5月5日
 ◇ずさん、間違い多発
 「これはまずい」。13日夜、首都圏にある東京電力支店幹部は、本店から送られてきた計画停電のグループ分け資料を見て目を疑った。含まれているべき地域が抜け落ちるなど精度が著しく低い内容だったからだ。管内9都県を自治体ごとに5グループに分け、対象地域や時間帯を示している。しかし、さいたま市は四つのグループで重複し、群馬県伊勢崎市は「埼玉県」に含まれ、ずさんさは明白だった。
 間違いの多発は、本店の担当者を中心に作業した結果だった。計画停電は対象地域の変電所からの配電を停止するが、変電所の配電エリアは自治体単位ではない。同じ町内でも変電所が異なるケースがある。支店が熟知するこうした細かい情報は本店にはなく、情報交換もなかった。
 ◇「犠牲者を出すな」
 首相の記者発表と同じころ、東京・霞が関の中央合同庁舎5号館の厚生労働省に計画停電実施の一報が届いた。細川律夫厚労相は事前連絡をしてこない東電への怒りを募らせた。在宅で人工呼吸器などを使用する患者をどう保護するか。大塚耕平副厚労相や医療現場を所管する大谷泰夫医政局長らを招集し指示した。「一人も犠牲者を出すんじゃない。在宅医療患者は末端まで連絡してくれ」
 しかし、作業は遅れた。東電から正式に届く前にグループ分けの資料を小宮山洋子副厚労相が独自入手したのが午後10時近く。「人命に何かあったら政権が倒れる」。ある政務三役は繰り返し口にした。ウェブサイトから診療所や訪問看護ステーション情報のリストを作成し、100人近い職員が分担して電話やファクスを入れ始めたのは14日午前3時。未明の電話に「今言われても困る」と戸惑いを隠さない声が相次いだ。
◇自家発電では無理
 混乱は医療現場を直撃した。「長時間の手術はできません。退院してください」。13日夜、川崎市の川崎幸病院では医師が患者の病室を訪ね、頭を下げていた。翌14日にコンピューター断層撮影(CT)の検査予約が入っていた患者らには延期を知らせた。
 病院のある川崎市幸区は14日午後1時50分から午後6時までに停電が予定されていた。石井暎禧(えいき)院長(74)には「安全を最優先する」との苦しい決断だった。屋上にある自家発電機の脇に置く石油タンクには消防法の規定で約3時間分の燃料しかない。画像診断、レントゲン撮影のデジタル化、電子カルテ……。「医療が電力にこんなに依存しているとは」。院長は痛感した。大動脈瘤(りゅう)手術の予約は3カ月先まで埋まっていたが、心臓血管の手術は長ければ10時間以上かかる。「自家発電機で安全に手術ができるのか」との声が上がり、可能な限りの手術の延期を決めた。
 ◇「中止」周知されず
 厚労省の電話作戦で約2600カ所すべてに連絡がついたのは14日昼過ぎ。14日は夕方まで停電はなく、川崎幸病院も「被害」を受けなかった。
 しかし、午前3時過ぎに「午前中の停電中止」が固まりながら関係機関への連絡は徹底されず、夜明けとともにパニックは現実になった。


検証・大震災:混乱「計画停電」(4)鉄道の大動脈断絶 2011年5月5日
 ◇14日午前7時、京急・横浜駅
 ◇JR停止、3万人の行列
 14日午前7時、巨大ターミナルの横浜駅。東京方面への大動脈の東海道線や京浜東北・根岸線などJR全線がストップし、並走する私鉄・京急電鉄の改札口に長蛇の列ができた。震災対応のため早朝出勤を命じられた横浜市港北区の男性銀行員(28)は1時間ほど並んだ末、やっと改札口近くにたどり着いた。「もう会社にいないといけないのに」。午前9時過ぎ、列は約3万人、2キロ以上に達した。
 鉄道事業を監督する国土交通省は、菅首相が前夜に計画停電を発表する直前まで詳細な実施予定を知らされていなかった。官邸や東電から連絡はない。同省鉄道局幹部が情報を得たのは鉄道事業者からだった。
 「聞いてないぞ」。それでも大きな混乱が生じる間引き運転になるとは予想できなかった。「対象から鉄道事業者を外すよう東電に指導してほしい」。所管する経済産業省・資源エネルギー庁に鉄道局長名で申し入れたのは混乱当日の14日。対応は後手に回った。
◇当初は切迫感なく
 JR東日本も当初、切迫感はなかった。14日午前0時10分。新宿駅を見下ろす本社14階の記者クラブ。広報担当者は「山手線と中央線快速に影響はないが、快速は徐行運転もありえる」と話した。しかし、その直後に担当者は息を切らしながら戻って来る。「運行に相当な影響を与える」。一転、険しい表情を見せた。
 同社は新潟県にある自社の水力発電所と川崎市の火力発電所の計2カ所で使用電力の過半(約56%、09年度)を自前でまかなっている。それを知る東電首脳も「鉄道への影響は少ない」と踏んでいた。
 しかし、踏切などは東電からも電力供給を受けている。自前の電力で施設が動いていることを確認しない限り、踏切が正常に作動しないまま列車が通過するおそれもあった。必要な人員を急に招集することも難しかった。
 「首都圏在来線38路線中、運行は5路線のみ」。午前4時、極めて限定した運行計画が発表された。
 混乱は続く。JRと並走する京急は午前6時15分、停電となる変電所が集中する金沢八景駅(横浜市金沢区)以遠の区間での運休を発表する。運行区間も本数を約9割に減らしたが、横浜駅など各駅に乗客が殺到。入場制限を行ったものの乗車率が200%を超える車両が続出した。
 午後0時15分。「このままでは十分な安全確保ができない」として「午後3時半をもって全線で運転を見合わせる」と発表せざるを得なかった。
◇2社間の調整なし
 東電は結局14日早朝から、予定された各区域の計画停電を時間を追って見送った。JRはそれに合わせ、運行区間を拡大。午前中、京浜東北・根岸線の大宮(さいたま市)-桜木町(横浜市中区)で「正午ごろに2割の運転率で再開できる」と発表した。
 この間、京急とJRで「すり合わせ」はない。京急が全線での運転見合わせを発表した21分後の午後0時36分、JR京浜東北・根岸線の電車が動き出した。京急の担当者は「現場の対応に追われ、とても他社の状況を確認する余裕はなかった」と振り返る。
 大動脈の中枢に当たる京急の蒲田(東京都大田区)-横浜間はその日、運転を再開できなかった。首都圏の16鉄道事業者が14日の始発までに組み直したダイヤは計116路線。影響があった人数は明らかにされていないが、いつもはラッシュ時だけで利用客は約267万人にも上る。


検証・大震災:混乱「計画停電」(5)経済活動揺るがす 2011年5月5日
 ◇14日午後、工場
 ◇「パンが作れない」
 「停電が来るぞ」。14日午後3時20分から7時までの停電が予定された「山崎製パン」の横浜第1工場(横浜市戸塚区)では、予定時間の前に製造ラインをストップさせた。パンは発酵から焼き上げまで7~8時間かかり、たとえ3時間でも途中で停電になると完成しないためだ。
 地震発生約2時間後の3月11日午後5時。同社は官邸から「被災地に救援物資を供給してほしい」と要請を受けた。東北に加え関東の工場も地震で生産ラインの一部が損壊した。だが、幹部たちは「火も水もない被災地ですぐに食べられるのはパン」「こんな時こそ物資をお届けするのが食品メーカーの使命だ」と、関東にある6工場で生産に全力を挙げた。
 ところが生産した20万個を載せたトラックがようやく宮城県に着いた13日、計画停電が発表された。関東の工場10カ所のうち7カ所が対象区域になっていた。「大変なことになる」。東京都千代田区の本社では、幹部らが生産体制の再構築を余儀なくされた。
 結局、関東の工場からの物資供給は断念した。名古屋から岡山までの7工場で日持ちするパンを量産し、陸路で愛知県の航空自衛隊小牧基地まで運び、輸送機で届けることになった。実際に停電が実施された同社の2工場では生産量が4割減。他メーカーも同様の影響を受け、首都圏のスーパーなどから一時パンが消える事態にもつながった。

  ◇半導体の打撃深刻
 産業界の中でも深刻な打撃を受けたのが半導体メーカーだ。超微細加工技術を駆使するため、わずかな時間でも電気が止まったり電圧が変われば設計や製造に影響する。品質にバラつきが出て「不良在庫の山を築きかねない」(業界筋)。多くのメーカーが操業停止を強いられた。
 携帯電話やスマートフォン向けカメラに用いる半導体を設計・開発するソニーの厚木テクノロジーセンター(神奈川県厚木市)は14日から1週間以上、ほとんど仕事ができなかった。製品の設計・開発の遅れを防ぐため、厚木センターの技術者を東電管外の拠点に移して作業を行わせる苦しい対応も迫られた。半導体や液晶部材メーカーの中には、一部の製品の生産を台湾などに委託した企業もあった。
 経済活動を揺るがした停電は、地震や津波がもたらした雇用情勢の悪化にも追い打ちをかけた。
 「休業手当を払わないと罰せられるのか」。14日午後。首都圏の労働局や労働基準監督署には、停電で事業を縮小せざるを得なくなった企業から問い合わせが続いた。リーマン・ショックの際に「調整弁」とされた非正規雇用の若者たちが、またも自宅待機を命じられることになった。個人加盟労組でつくる全国コミュニティ・ユニオン連合会(東京都渋谷区)では電話が鳴り続け「休業補償がないと言われた」との相談が相次いだ。

  ◇「日銀逃げる」デマ
 「日銀が大阪に逃げる」。外資系金融機関の間では、こんな情報が駆け巡った。
 日銀と金融機関の資金決済をつなぐ「日銀ネット」のデータセンターがある東京都府中市は当初、計画停電の対象区域とされた。自家発電装置を備えているが、仮に資金決済に支障が出れば震災後の経済の混乱を増幅するのは必至だった。
 このため日銀は13日夜から対応策を検討する。念のため大阪にあるバックアップセンターの点検をシステム会社に打診した。それが原発事故で不安を強めていた外資系金融機関に伝わり「政府の一部である日銀が東京から逃げる」とのデマに発展した。東電と協議した結果、対象区域外になったものの、一部外資系社員の東京脱出に拍車をかける結果となった。白川方明総裁は講演先の米ニューヨークで「根拠のないうわさ」と釈明しなければならなかった。


検証・大震災:混乱「計画停電」(6)何で被災地が 2011年5月5日
 ◇14日午後5時、被災地
 ◇「なぜここが最初に」
 救急病院に指定されている茨城県鹿嶋市の小山記念病院(224床)。同県は震災で死者23人、行方不明1人。鹿嶋市内では断水も続いた。14日午後3時20分から同7時までの間に約3時間の計画停電が予定されていた。
 午後5時過ぎ、院内は暗くなった。非常用電源では通常電力の約30%しか確保できない。電気を使うのは人工呼吸器やホストコンピューター、ナースステーションなどに限った。全看護師約200人のうち休日返上を含む約120人が万一に備えて待機した。
 間もなく、救急車から連絡が入る。「急患です。受け入れは可能ですか?」
 しかし、検査機器は使えず十分な処置ができない。隣接する3市でも同じ時間帯に計画停電が予定されている。事前の取り決め通り、遠方の水戸市か千葉県へ搬送してもらうしかなかった。
 午後6時半に電気が復旧するまでの間、受け入れられなかった急患は計3人。床枝正行事務長は唇をかんだ。「救急病院の配置を考慮しないで停電にすると、一帯は医療過疎になってしまう。救える命も救えない」
津波で13人が死亡した千葉県旭市。飯岡地区などでは250棟以上の家屋が壊れ、市内4カ所に771人が避難していた。
 市立飯岡小学校には約300人がいた。14日、震災後初めて市内の婦人会などボランティアによる炊き出しが行われ、午後4時半過ぎから温かい弁当と豚汁が配られた。そのさなか、あかりが消えた。「何で被災地が最初の計画停電なのか」。そんな声が漏れたが、被災者は耐えるしかなかった。
 鹿嶋市や旭市など被災地が県知事らの抗議で停電対象から外れたのは、翌日のことだった。
 計画停電初日の14日、東電のコールセンターには苦情や問い合わせが計約5万400件寄せられた。枝野官房長官は同日の定例会見で「関係機関の情報提供には適切でない部分も見受けられ、政府の立場からおわびする」と陳謝した。


検証・大震災:混乱「計画停電」(7)暗闇に包まれた 2011年5月5日
 ◇15日午後6時50分、東京・多摩
 ◇「信号停止、つかめない」
 東京都内で初の計画停電は多摩地区で実施され、JR八王子駅北口は15日午後6時50分、暗闇に包まれた。だが、東電から警視庁への連絡は直前で、どの信号がいつ停電するのかも分からない。
 調整窓口役となった警視庁総務部企画課の佐藤善亮管理官は東電に強い不満をぶつけた。「せめて前日までには教えてもらわないと対応が難しい」。東電側は「電力の需要と供給をみて決めているので判断がギリギリになってしまう」と釈明するばかりだった。
 都内の信号機は3月末で1万5604カ所。うち停電時に自動で発電する自家起動式発電機を備えた信号機は743カ所、停電時に手動でスイッチを入れる路側式発動発電機のある信号機は109カ所に過ぎない。大半は停電開始とともに消えることになる。
 都内約100署にはポータブルの発動発電機がそれぞれ20台ほどあり、使い方を記したマニュアルが各署にメールで送られた。それ以外の場所では署員らが可能な限り、手信号で交通整理するしかない。東電からどの場所で何時から停電があるか情報を得て、警察電報とメールで各署に伝え、各署はどこの信号に警察官を配置するか決めることにした。しかし、対応には限界がある。「停電する具体的な町名まで知らせてもらわないと」。佐藤管理官は苦渋の表情を浮かべた。
 都内では、15~25日のうち7日間、計画停電が行われ、延べ151回に上った。信号機は累計で1万3184回、電気が消えた。警察官ら計6155人が配置されたが、対象地域では、重傷1件を含む人身事故5件、物件事故7件が発生した。
 
  ◇発電機をかき集め
 16日、群馬県安中市。午前10時半ごろ、見通しの悪い県道交差点で、地元の農業男性(69)のバイクと自営業男性(65)の軽乗用車が出合い頭に衝突。農業男性が骨折に伴う合併症で5時間後、死亡した。
 安中署は計画停電に伴い国道18号沿いの交差点4カ所に警察官を配置。発動発電機を東電や消防などから計15台ほどかき集めて対応したが、事故現場の信号機は消えたままで、警察官もいなかった。
 同署の窪洋右・交通課長は「すべての交差点に署員を付ければいいが、現実的に不可能。地元の人しか通らない狭くて見通しの悪い道なら、かえって運転が慎重になると思ったのだが」と悔やんだ。

  ◇薄氷踏む患者対応
 東京都足立区で最初に計画停電が実施された16日午前。区西部福祉事務所の野坂卓生さん(39)はある患者の自宅へ同僚と自転車で向かった。
 野坂さんは14日、区内で人工呼吸器などを必要とする患者のうち停電に対応できない人を調べていた。予備バッテリーも酸素ボンベもない筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者が1人いた。予備バッテリーは被災地に大量に送られ、メーカーに在庫はない。思案するうち、患者の通う病院から「車のシガーソケットから電気が取れる」と教えられた。試してみると使えた。
 患者の自宅に着くと、既に停電していた。内部バッテリーの残り時間は約40分。患者宅の車を動かし、シガーソケットに変圧器を入れた。
 正午過ぎ、その日の停電は終わった。だが、翌日も翌々日も続く。その都度、車のバッテリーでしのぎ、メーカーから予備バッテリーが届いたのは18日の夜。まさに薄氷を踏む思いだった。


検証・大震災:混乱「計画停電」(8止)「ブラックアウト」寸前 2011年5月5日
 ◇17日午前9時、東電
 ◇需要、供給力の99・4%に
 「電力使用量が昨日の実績を400万キロワットも上回っています」。17日午前5時ごろ、藤本孝副社長の携帯電話が鳴った。管内の電力需要と発電量をリアルタイムで把握する東電本店14階の中央給電指令所からの緊急連絡だった。
 この日の都心は真冬並みの寒さとなり、朝から暖房を使う家庭が急増した。東電の電力供給力は一部の火力発電所の復旧で3350万キロワット。震災直後よりは増えていたが、藤本副社長は背筋が凍る思いだった。「電車の運行が増える夕方になれば、首都圏で突然の大停電(ブラックアウト)を引き起こしかねない」
震災後の電力需給の推移(3月14日~4月30日) 電力需要が供給を上回ると、送電線に障害が起きるのを防ぐため一部地域への電力供給が自動的に打ち切られる仕組みになっている。計画停電とは異なり、どの場所でどの程度の規模で起きるかは、直前まで東電にさえ分からない。「政府機能を守る」という理由で計画停電の対象から外された都心部でも停電に見舞われる恐れがあり、大混乱が生じるのは必至だ。
 午前7時過ぎから中央給電指令所で開かれた緊急会議には、社内の気象予報士らを含む約20人が招集されたが、有効な対策は見いだせなかった。「国に節電を呼びかけてもらうしかない」。藤本副社長は腹をくくり、8時過ぎに経済産業省に担当者を送った。
 「現在の電力使用量3330万キロワット」。午前9~10時には中央給電指令所のコンピューター画面に需要が最大供給能力の99・4%まで迫っていることが示された。経産省でも一気に緊張が高まり、幹部は「大臣に緊急会見でブラックアウトを警告してもらうしかない」との意見で一致した。
 大臣室に連絡を取ったが、海江田経産相は福島第1原発事故への対応で不在。事態は一刻を争う。午後1時41分、「予測不能な大規模停電が発生する恐れがある」との緊急大臣談話を発表した。
 報道やインターネット上で談話が流れた午後1時50分ごろを境に、電力需要は急激に低下。午後3時過ぎには、前日の同時刻の需要を下回った。危機は寸前で回避された。

  ◇大きな傷痕残し
 危機感を共有しながら政府と東電は「停電パニック」を防げず、巻き込まれた現場に傷を残した。
 川崎幸病院で計画停電が実施されたのは3月17日。石井院長は自家発電で医療機器を使い続けることに怖さを覚え、東電川崎支社を訪ね、対象から外すよう求めた。が、支社側は「自家発電の技術的なアドバイスしかできない」と繰り返した。23日には停電が予定された時間帯に緊急の大動脈瘤手術をせざるを得ない事態になった。直前に停電は回避されたが、「もし本当に停電していたら……」と院長は憤る。
 「医療機関を除かない限り、夏の計画停電は認めない」。14日以降、枝野官房長官は東電に繰り返し求めたが、経産省幹部は22日、「計画停電なんかでは夏は乗り切れない。もっと強力な措置が必要になる」と深刻さを隠さなかった。猛暑になれば電力供給がパンクするのは明白だ。
 「強力な措置」とは、74年のオイルショック時に導入した電気事業法27条に基づく電気使用制限。契約電力500キロワット以上の大企業など大口需要家を対象に強制的に一定の電力使用削減を義務付ける「伝家の宝刀」だ。経産省はいったん産業界に夏場の最大電力使用量の昨年比25%削減を義務付ける節電対策原案を固める。しかし、日本経団連の米倉弘昌会長は28日、「どうしても需要超過が避けられない時の最終手段のはずだ」と反発。節電は「企業の自助努力が前提」とけん制した。
 政権内でも景気への影響を懸念する与謝野馨経済財政担当相が「産業界の負担が重過ぎる」と見直しを要求。経産省は結局、東電に福島第1原発から30キロ圏内にある被災した火力発電所の復旧を急がせ、夏場の供給力を5500万キロワットまで積み上げさせることで15%削減に緩和した。が、実現を危ぶむ声もくすぶる。

 電力問題は迷走含みのまま夏に向かう。





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